変らない農業のプロセスとは?
一般的に、農業は他業種と比べると、稼げない業種だと言われています。一方で、古の時代から農業ほど仕事の進め方が変わらない業種もないだろう。畑に種を蒔いたり、苗を植えたりして、水や肥料を与えて、収穫まで雑草を刈る。毎年同じ作業の繰り返しです。このように、何十年も続けられてきたのが、農業技術の集積として、先祖代々受け継がれてきたのでしょう。
農作物を作ることに関しては、試行錯誤を通して、これ以上ない程に、研ぎ澄まされた技術を築いてきたことは事実でしょう。その一方で、お金を稼ぐこと、あるいは一つの事業として経営という観点からは、知恵を絞り、改善がなされてこなかった部分が多いように感じます。
農業を製造業に例えて経営のカラクリを考える
農業を一つの経営として考えると、モノ作りの技術開発は経験値が上がっているのに対して、お金を稼ぐことに関しては、ほとんど改善されてこなかったのではないかと思います。経営学的な考えを農業に持ち込んで考えると、農業で売上を伸ばすためには、大きく2つの方向性が考えられます。例えば、自動車産業に例えてみれば、生産台数を増やせば売上が伸び、その一方で車のグレードを上げて高級車を製造しても、全体の売上が上がります。
農業でも同じように考えると、作付面積を増やし収穫量を増やせば売上が伸び、農作物の品質を上げれば、全体の売上が伸びます。作付面積を増やすことは、農業業界の慣習などが要因で1人で実施するようなことは難しい部分もありますが、農作物の品質を上げることにより売り上げを伸ばすことは誰でもできることです。
農協ブランドから脱却することが出来るのか?
さらに、従来の農業では、各農家が生産者となり、農作物は市場の一定価格で農協が買い取り、農業から各小売店へ商品が流れるという流通プロセスになっていました。つまり、製造・卸売り・販売の3つのルートを通すことで、農家は自分たちが収穫した農作物の販売ルートを確保してきたわけです。言い換えると、農家の販売先は農協に限定してきたとも言えます。これでは、いくら品質の高い農作物を作っても、大きな儲けを得ることはできません。
今後は農業でお金を稼ごうとすれば、農協に販売ルートを限定しないで、農協も含め複数の販売ルートを確保する必要がありそうです。例えば、食品スーパーなどとの提携による契約農家であったり、レストランなど農作物を使用する業態との契約など、農家が自ら小売先の要望を取り入れて、その要望に合った農作物を作ることで、直接小売ルートを開拓することも考えられます。あるいはインターネットを通して、消費者へ直接販売することもよいでしょう。そのためには何が必要でしょうか?
信頼とブランドが農業で稼ぐための重要なポイント
抽象的な言葉を使えば、消費者との「信頼」と言うことになります。言い方を換えれば、自分にしかない「ブランド」力ということになります。もうすでに、道の駅などの小売店などでは、農家の名前入りの野菜などの農作物が販売されていたりしますが、更にブランド力を高めるためには、何か必要でしょうか?消費者の視点から考えると、どのような野菜や果物であれば、値段が少しくらい高くても購入したいと思うでしょうか?味、形、安全性、新鮮さ・・・全て消費者が求めるものですね。とは言っても、これだけでは農家のブランド力はあまり上がらないでしょうし、売上を上げる起爆剤にはならないかもしれません。
農業に「ライブ感」を消費者に伝えるメリットは?
私は、目に見える形での「ライブ感」だと思います。例えば、話は少し逸れますが、同じレストランでも、お客さんの目に見えない店舗の奥で作った、お好み焼きよりも、お客さんの目の前で、ジュージューと音を立てて作られる、お好み焼きの方が美味しく感じられるのではないでしょうか。あるいは、お寿司屋さんは、お客さんの見えない店の奥で握るのではなく、なぜお客さんの目の前でお寿司を握るのでしょうか。お寿司を作っているプロセスも、お寿司の値段に含まれているから、わざわざお客さんの目の前で握り、出来上がったお寿司を直ぐに食べてもらうため、目の前に給仕するのでしょう。
もう一歩、農家が踏み込んで考えるべきことは、農作物が誰が、どこで、どのように作られているのかをお客さんに見せる「ライブ感」が、農作物一品一品の価値を高めるのではないでしょうか。実際に、そのような農作物のライブ感を消費者が必要としているかどうかは、分かりませんが、何らかの形で、お客さんの目に見える形で情報発信していけば、生産者と消費者の距離は縮まります。現在では、そのための道具はいくらでもあり、しかも無料で利用できるツールばかりです。
例えば、YouTubeで農作物の栽培プロセスをアップロードし情報発信するのもよいでしょう。あるいは、自分ブランドの農作物のファンを作るためにFacebookなどの双方向のSNSを利用してもよいでしょう。あるいは、世間一般に自分ブランドの農作物を知ってもらうために、サイトやブログなどを作り、定期的・継続的に情報発信することも有効でしょう。このように自分ブランドを積極的に情報発信していくことで、ブランドの付加価値を高めていくことも重要です。