田舎での高齢者のムラのお付き合い事情

田舎で生活するためのひとつのハードルとも思われているムラのお付き合いについて、山間部の農村から現地レポートします。

田舎には田舎の掟があります。そして、そのシキタリは、村では先祖代々受け継がれてきた慣習のため、お座成りにはできないという暗黙のルールがあります。

今回は、高齢者の方の間での村の人たちとのお付き合い事情について、私の家族がどのように対応しているかという間接的な実体験を基にご紹介します。

 

村の人付き合いは「組」の集落が基本

村の人付き合いと村の行事への参加には、半強制的な行事と自由参加の行事と個々人の人付き合い、つまり大きく分けると3つの人付き合いと行事があります。

村には、それぞれの住んでいるエリアに区分された集落毎に「組」が決められています。一つの組で、おおよそ10世帯~30世帯くらいのところが多いです。

そして、村の組の結束力というか、協力関係はかなり強いものです。そのため、何か困ったことがあれば、相談に行けば、組の誰かが助けてくれます。

 

村の集落の人付き合いはギブ&テイクが基本

逆に、組の誰かから頼み事をされることも、しばしばあります。例えば、庭の木を伐採したいから、手を貸してほしい、というような手伝いを依頼されたりします。

そのような手伝いをした場合は、人にもよりますが、私の知る限りでは、多くの場合は、寸志を手渡したり、頂いたりすることが多いです。

もちろん、お金のやり取りになりますので、貰う場合も渡す場合も、多すぎても少なすぎても悪いので、気を使うところです。話し慣れた相手であれば、直接、金額を言い合ったりしています。

 

村のお付き合いと行事の慣習

田舎の集落ではなくても、郊外での暮らしでは組単位の自治がされることが多いかと思います。例えば、回覧板や清掃活動、あるいは神社やお寺のお手伝いなどです。

このような村の付き合いや行事は、3つの種類に分けるとすれば、大きく下記のようになります。

  • 半強制的参加の行事
  • 自由参加の行事
  • 個々の人付き合い

半強制的参加の行事

半強制的参加の行事とは、定期的に行われる「寄り合い」に代表されるような村の人がほぼ全員参加するような行事になります。

また、青年団のようなグループがある場合は、消防訓練などの活動も、年齢が若い人は、ほぼ半強制的に参加することになります。

自由参加の行事

次に、自由参加の行事とは、例えば、村にあるお寺や神社などで行われる「祭祀」(まつりごと)に関連する行事です。このような行事も、実際には半強制的な参加に近いものもありますが、参加していない方もチラホラいます。

特に、80歳以上の高齢者世帯の場合は、体力的に厳しいためか、不参加の世帯も多くあります。特に、参加しなかったからと言って、村八分にされるというような、恐ろしいことにはなりません。

ただし、そのような行事には、お寺や神社への寄付と題して、一世帯につき数千円を提供することが多いです。その場合は、参加でも不参加でも、寄付金を納めることになります。

個々の人付き合い

田舎の高齢者は、畑で農作業をしているか、自宅でテレビを見ているか、デイケアサービスなどで外出しているか、あるいは人とおしゃべりをしているか、それくらいしかすることがありません。

我が村では、夕方になれば、多くの高齢者が犬を連れたりして、健康のために散歩を始めます。散歩している人同士の、おしゃべりが始まり、これも一つの田舎での高齢者のコミュニケーションになっています。

お互いの噂話をしたりして、時間を潰すのが高齢者の方たちの日常になります。もちろん、そのような個々人間のコミュニケーションに参加しない方もいます。特に、仲間に入っていかないと、仲間外れにされることもありません。

 

我が家の村の人たちとのコミュニケーションとお付き合い

父親は既にかなりの高齢になりますので、村の行事には、ほとんど参加していません。半強制的参加の行事には、必要な時だけ母親が参加しています。

それでは村の人たちとの交流がないかと言うと、そうでもありません。上記で言えば、個々人同士の人付き合いは続けています。やはり、年齢が同じくらいの方で、特にお互い話が合う方の自宅へ行き来しています。

それでは、母親はと言うと、半強制的参加の行事には、村の付き合いのため、特別な用事や体調に問題がなければ、ほとんど参加しています。自由参加の行事にも、村のお付き合い上、出来るだけ参加するようにしているようです。

村には敬老会のようなグループがあります。こちらは自由参加の人付き合いになりますが、同じ組の方以外の集落の方たちも参加するような会合になります。同じ組の方の中には、熱心に誘ってくれる方がいるようなのですが、あまり参加には前向きではないようです。

 

まとめ

農村の田舎では人付き合いが重要で、ムラの人付き合いは大変だとよく聞きます。ところが、私が見る限り、特別に困るようなことは感じられません。

むしろ、困ることは村の中に、一人でも困ったお爺ちゃんやお婆ちゃんがいると、村での生活にストレスを抱えることになる要因になります。

もちろん、大都会の生活では、寄り合いという町内会の行事さえないため、都市部から田舎に移住した方にとっては、そのような会合に煩わしさを感じる方も多いかもしれません。

田舎では人との繋がりが一つのライフラインになっている部分もあります。村の人から手伝いの依頼をされれば、ムラの一人として受け入れられた証になるのかもしれません。

逆に、ムラの生活で分からないことを気軽に聞けるくらいの人付き合いは必要になります。ムラの集落は、文字通りギブ&テイクで成り立っています。