新規就農の前に理想と現実を知るためにプチ農業期間の勧め

新規に農業を志そうと考え始めた時には、就農後の不安よりも期待が大きいのではないでしょうか。農業に限らず、始めて新しいことに挑戦する時には、期待と不安の両面を感じるものです。

例えば、私は始めて一人で海外旅行に出かけた時のことを思い起こしてみると、その当時、私は大学2年生でした。もう、数十年前の話ですが、バックパック一つを背負って向かった国はインドでした。その頃は英語もそれ程出来なかったため、生きて帰ってこられるか、不安でしたが、行くと決めた時には、期待で一杯だったことを思い出します。

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過度な期待は大火傷の始まり、一歩下がって考える

何でも新しいことを始める時には、期待も不安も感じますが、あまりにも不安が大きければ一歩先に踏み出すことは出来ないでしょう。期待の気持ちが大きいからこそ、一歩先に踏み出すことが出来るのだと思います。

ところが、この期待が曲者になる場合も多くあります。今まで経験したことがないことを自分の頭の中だけでイメージするわけですが、そのイメージを理想化し過ぎて膨らませ過ぎると、その後の現実に気が付いた時に、大きなショックを受けてしまいます。

それでは、本題に入りますが、新規就農の場合も、大自然豊かな田舎でのんびり一人農業、あるいは夫婦2人で田舎暮らしと考え、農業に対する期待の中には良いイメージだけしか持っていないケースが多いのではないでしょうか。そこで、少し立ち止まって、気持ちを落ち着かせて、農業の現実を考えてみる必要があると思います。

無休の農作業と近所付き合いを覚悟しよう

本格的に農業をしようとすれば、会社員時代のように週休2日などと定期的な休日は確保できないでしょう。野菜農家を目指しているのであれば、植物とは言え、仕事の相手は生き物で、自分以外では世話をする人がいない状況がほとんどでしょう。毎日、水を与えることはもとより、施肥をしたり、害虫を除去したり、草刈をしたり、・・・収穫が終わるまでは無休と考えておいた方がよいでしょう。

実家が農家ではない方が、新たに農業を始める場合、最も考慮しなければならないことは、村社会での「近所付き合い」です。都会で農業をする場合以外は、多くの場合、過疎化と高齢化が進んだ村社会で農業をすることになるケースが多いです。

このような村では、毎月のように部落ごとの寄合いがあったり、村の年中行事があったりします。村社会で生きていく覚悟がなければ、農業以外の思わぬところで心が折れてしまうことも考えられます。時期によっては、村のお祭りなどの時期には農作業どころではなくなることもあります。

村という組織の一員として気を使うことも・・・

以上のことから考えられることは、人付き合いが苦手な方が、新規就農する場合は、農業以外の村社会への順応が出来るかどうかを、よく考えた方が良いでしょう。しかも、村で付き合っていかなければいけない人は、自分より年上の年配の方たちばかりで、若い同年代の人は皆無でしょう。

会社勤めの場合は、組織で働くため、上司や部下だけではなく、同年代の同僚もいますが、小規模の農業経営の場合は、上司や部下はいないですが、同年代の相談相手もいないということを知っておいたほうがよいでしょう。

短期間のプチ農業移住から始めてみては?

最後にまとめですが、本格的に新規就農をする前に必ずしておくべきことは、少なくても実際に自分が農業をする地域や部落へ足を運んで、どのような村なのか、そこで住んでいる人はどのような方たちで、どのような方が農業に携わっているのか、を確認しておくことが非常に重要です。出来れば、農業の世界に足を一歩踏み入れる前に、「プチ農業期間」として実際に農業を実体験する期間を作ることをおススメします。

例えば、夏の時期の収穫期には3ヶ月間程度の農場ボランティアやアルバイトなどをしてみたり、貸し農園や市民農園のような場所で畑の一区画を借りて、実際に野菜などを自分ひとりで栽培するためには、どれくらいの手間と労力が必要なのかを知ることも重要です。

例え、新規就農をしたとしても、理想と現実のギャップに幻滅して、離農してしまうようなことがないように、自分には農業をする適正があるのかどうか、村社会で生きていく覚悟があるかどうか、など自分を見つめ直す期間を設けることも考えて見ましょう。